さざんか

さざんか 表紙イメージ

[著者] 桜田靖

ライフワークの生物研究を潰された海部正男は人生に絶望し、闇雲に若い日に愛し合った女人の消息を求め昔の赴任地の別府へ向った。
海を眺めて追想に耽った。担任の生徒が女生徒を孕ませた事案を処理するうちに、女生徒の母親に誘惑されて恋に落ちた。醜聞になる前に別府を離れて東京の学校の教師となり、二人の断絶の歳月は過ぎた。
さざんかの屋敷も変わり、往時の関係者は全て亡き人になっていた。愛した人の孫娘の案内で、名残のさざんかの花を墓前に捧げた。墓の下から鬼哭がした。

定価:330円(本体300円+税10%)